焦点:中国国家副主席訪米、オバマ政権は為替で配慮か

[ワシントン 10日 ロイター] 13日からの週の習近平・中国国家副主席の訪米では、オバマ米政権は為替問題をめぐって微妙な対応を迫られる見通しだ。

今年11月に行われる大統領選を意識すれば、人民元の上昇加速を強く要求したいのは山々だが、同時に中国との関係悪化は避けたいというのが本音。米政府は、巨大市場である中国の対外開放を逆に妨げる事態にならないよう一定の配慮をするとみられている。

注目されるのは、オバマ大統領がどの程度、為替で強い態度に出るのか。大統領選で共和党有力候補のロムニーマサチューセッツ州知事は、当選すれば初日から中国を為替操作国に認定すると表明している。

一方、中国の政府調達でのシェア拡大を目指す米企業は、中国市場の対外開放や、自社の知的財産権保護などを最優先課題ととらえている。

<米中関係の将来にとって為替はカギではない>

中国問題の専門家は、オバマ大統領と習近平・中国国家副主席との会談では、為替問題を慎重に扱うべき、と警告。対応次第では、中国を怒らせ、より広範囲な課題が損なわれる可能性がある、と指摘している。

ブルッキングズ研究所の中国専門家、ケネス・リーバーサル氏は「われわれの懸案解決や、将来にとって、為替はカギではない」と述べた。

モルガン・スタンレーのスティーブン・ローチ非執行会長も「中国は複雑な課題を抱えている。中国に関しては総体的な視点で見るべきであり、為替それだけを議論するのは間違った姿勢だ」との見方を示した。

<政府調達問題など、通商関係の改善を優先>

いずれにしても、為替問題は時がたてば、自然と解決される可能性が高い。最も難しい課題は、米中間の通商関係の発展、とみられている。

中国の胡錦涛国家主席は1年前に訪米した際、中国の政府調達上の条件から革新政策を切り離すことについて合意した。今回の米中会談では、中国がこの約束をどの程度果たしているかが協議される見通しだ。

中国国務院(内閣に相当)は最近、地方当局に対して、革新政策と政府調達をまだ関連付けているケースがあれば、廃止するよう通達した。

ただ、全国貿易協議会(NFTC)のビル・ラインシュ会長は「現状を大幅に変えるには、十分ではない」と批判的な立場を崩していない。

(Doug Palmer記者、Stella Dawson記者;翻訳 吉川彩;編集 吉瀬邦彦)