パキスタン最高裁が首相起訴=政権と全面対決、選挙前倒しも

イスラマバード時事】パキスタン最高裁は13日、ザルダリ大統領の過去の汚職疑惑について、ギラニ首相が2009年末の最高裁命令に背いて訴追作業の再開を拒んでいるとして、同首相を法廷侮辱罪で起訴し、正式な裁判を開始した。
 出廷したギラニ首相は「自分は罪を犯していない」と潔白を主張。昨秋以降、軍部との対立で窮地に追い込まれているザルダリ政権が、最高裁とも全面対決する構図が鮮明となった。
 最高裁はギラニ首相が2年以上も命令に背き続けたことに業を煮やしており、今後政権への圧力を強めるのは必至。この日、ギラニ氏は法廷で、時折大声を出して裁判官の質問を遮るなど挑戦的な姿勢を見せたため、最高裁判事計7人の心証が悪化する恐れもある。
 最高裁は起訴理由として、(1)首相が意図的に法廷の命令に背いた(2)憲法では首相は最高裁に従う必要がある―ことなどを明示。首相の訴追担当者にハク司法長官を命じた。最高裁は22日に次回審理を開く。
 パキスタンでは昨秋、ザルダリ政権が米国に軍のクーデター阻止を求めたとされるメモ疑惑が浮上し、強大な権限を持つ軍トップのキアニ陸軍参謀長が激怒した。対テロ戦で協調関係を保つ必要がある米国などの批判をかわすため、軍はクーデターという実力行使ではなく、司法に裏から手を回して政権転覆を図っているとの「陰謀論」が根強い。
 ギラニ首相が有罪となれば失職が確実視されており、政権の求心力低下は不可避。与党パキスタン人民党(PPP)が野党の求めに応じ、来年までに予定される次期下院選を今年秋頃へと大幅に前倒しせざるを得ないとの観測も出ている。