<シリア>離反兵士、首都で攻勢 アラブ連盟、仲介案提示へ

【カイロ和田浩明】アサド政権が反体制派の武力弾圧を続けるシリアで、離反兵士団体「自由シリア軍」が首都ダマスカス近郊での作戦を強化し、一部地域を勢力下に置き始めている模様だ。同軍幹部が26日、毎日新聞の電話取材に明らかにした。一方、アラブ連盟のアラビ事務局長は、来週にも国連安全保障理事会でシリアの状況を説明し、アサド氏から副大統領への権限移譲を求める連盟の仲介案を提示する意向を表明した。

 自由シリア軍のマリク・クルディ副司令官によると、離反兵士らはダマスカス近郊のドゥーマやイルビン、ザバダニなどを事実上、勢力下に置いた。首都中心部の北東約10キロのドゥーマでは21日ごろから、軍・治安部隊との衝突が断続的に続いており「シリア軍は何度も奪還を図ったが撃退されている」と語った。3日前から停戦交渉が始まったという。

 ドゥーマ在住の反体制活動家男性アブドルラフマン氏によると、自由シリア軍は市内の約8割を支配下に置いている状況という。26日も軍・治安部隊との銃撃戦が発生した。

 アラブ連盟が派遣した和平監視団とダマスカス近郊のハラスタを訪問したロイター通信記者によると、同行のシリア治安関係者は「安全が保障できない」として一部地域への立ち入りを拒否した。

 一方、アラビ事務局長は、週明けにもカタールのハマド首相兼外相と安保理に出席し、シリア情勢を説明すると発表した。アサド大統領から副大統領への権限移譲▽反体制派も含めた挙国一致内閣の設立▽早期の総選挙と大統領選挙の実施−−を柱としたアラブ連盟仲介案の承認も求める。

 仲介案は21日に連盟外相級会合で決定されたが、シリアのムアレム外相は24日の会見で受け入れを拒否。反体制派を「テロリスト」と決めつけ、「断固とした措置を取る」と弾圧継続を明言した。一方、国営通信によると、アサド政権は連盟和平監視団の滞在期間1カ月延長に同意した。

 安保理では、シリアへの主要武器供給国である常任理事国のロシアや中国がアサド政権の制裁を拒否しており、アラブ連盟案の承認は困難と見られる。