「ホルムズ海峡封鎖」以外のシナリオ、イラン革命防衛隊が暴走も

[ロンドン 25日 ロイター] イランの核開発疑惑をめぐり、ペルシャ湾情勢はにわかに緊張が高まっている。米国が昨年末にイラン制裁法案に署名したほか、欧州連合(EU)も今月23日、原油禁輸を含む追加制裁措置に合意し、イラン包囲網を強化。一方、イランは反発を強めており、ホルムズ海峡封鎖も辞さない構えを見せている。

しかし、ロイターが各国政府内外で取材した情報や軍事、安全保障の専門家らの間では、イランが海峡封鎖に踏み切るとの見方は極めて少数派だ。

湾岸諸国研究センターのムスタファ・アラニ氏もその1人。「ホルムズ海峡の封鎖は神話にすぎない。イランは(1980年代の)イラン・イラク戦争の8年間で封鎖を試みたが、1時間でさえ成功しなかった」と指摘。「イランには当時、米国船を攻撃して大反撃を受けたという苦い教訓がある。海軍の3分の2が1日で壊滅した。われわれはそれを目の当たりにしたし、イランの限界も明らかとなった」と語る。

しかし、専門家らは海峡封鎖の可能性は低いとする一方で、欧米諸国に対抗するため、イランが他の選択肢を検討している可能性があると警告する。

そうした「他の作戦」の中には、ペルシャ湾を往来するタンカーを攻撃型潜水艦で襲撃したり、他国が領有を主張する無人島を占拠したり、民間船舶や軍用船を拿捕(だほ)して人質を取ったりすることなどが含まれるという。また、アラブ諸国イスラムスンニ派シーア派の対立を煽ったり、レバノンシーア派組織ヒズボラなど「代理」の武装勢力を利用し、アフガニスタンなどで米軍攻撃を指揮したりすることも考えられる。

しかも、こういった海峡封鎖以外の選択肢には、戦争へと発展しかねない危険も潜んでいる。

米海軍大学のNikolas Gvosdev教授は「これらのシナリオは、イランが取り得る代替策として大いに考えられる。緊張も明らかに高まるだろう」と指摘。「イランはペルシャ湾の緊張を高めることで、他国から米国に自制圧力をかけるよう仕向け、自分たちが軍事演習するための時間稼ぎをもくろんでいるのかもしれない」との見方を示した。実際、イランの革命防衛隊は2月にホルムズ海峡で軍事演習を計画している。

<「非対称な戦争」の脅威>

また、さらなる懸念は、強硬路線で知られるイラン革命防衛隊の海上部隊が、欧米とは戦力で劣るにもかかわらず、無謀な「非対称の戦争」を仕掛けてくる可能性があることだ。ロンドンのコンサルタント会社エクスクルーシブ・アナリシスのジョン・コクラン氏は、「われわれは、革命防衛隊の下士官が無許可の攻撃に出たりする可能性が高まっていると見ている。その場合、致命的な結果を招くことになるだろう」と指摘した。

ホルムズ海峡を行き交う商船の多くは現在、ソマリアの海賊から身を守るため、武装した警備隊を同行させている。漁船に不必要に発砲するなどしてすでに非難されている警備隊が、イラン部隊に発砲することがあれば、より大きな対立へとつながる恐れがあるとの声も上がっている。

しかし、西側のある海軍幹部は、イランとの衝突がエスカレートすることはないと自信をのぞかせる。「(衝突が激化すれば)イランにとっては失うものが多過ぎる。われわれの軍は、ちょっとした火種が大きな衝突へと燃え上がるようなことはさせない。何か起きれば、すぐに戦闘準備を整える」と語り、イランの次の出方を静観する構えを見せている。