<IAEA>天野局長「イラン核疑惑、今年の最重要課題」

 【ウィーン樋口直樹】国際原子力機関IAEA、本部ウィーン)の天野之弥事務局長は19日、核不拡散分野における「今年の最重要課題」としてイランの核兵器開発疑惑に取り組む方針を明らかにした。イラン産原油の禁輸などで制裁措置を強める欧米と、ホルムズ海峡の封鎖を警告するイランが対立する中、天野氏の発言は「核の番人」として疑惑の解明に当たる重大な決意を示したものだ。

 IAEA事務局が20日公表した加盟国向け新年会の発言録によると、天野氏は「12年の主な優先事項は、イランの核開発が平和目的であるとの国際的な信頼を回復することに向けて事態の進展を図ることだ。主要な保障措置(核物質管理)問題の中で最も重要な課題だ」と強調した。

 また、今月末にIAEA査察部門のトップ、ナカーツ事務次長率いる高官級調査団がイランを訪問することを正式発表した。天野氏は具体的な訪問日程に言及しなかったが、イランのソルタニエIAEA大使によると、調査団は今月29日から31日に現地入りする。

 IAEAは現在もイランで申告済み核関連物質の計量管理など通常の査察活動を行っているが、今回の調査団は、核兵器開発に必要な資材の調達や特殊技術の習得、実験などに関する疑問について、イラン側から説明を受けるのが目的。

 天野氏は昨年11月の理事国向け報告書で、イランによる核兵器開発疑惑を指摘する加盟国の情報を「信頼できる」と結論付け、イラン側に疑惑に答えるよう求めていた。天野氏はイラン側の対応を3月の理事会で報告する。イランから十分な協力が得られなければ、欧米などの対イラン圧力はさらに強まる。