赤字・債務・高失業率・不景気…スペイン四重苦

マドリード=三井美奈】20日のスペイン総選挙で下院の過半数を獲得して大勝した中道右派・国民党のマリアノ・ラホイ党首は、財政赤字、巨額の累積債務、22%の高失業率、景気低迷という「四重苦」に直面する。

 スペインの株式市場は21日、大幅に値を下げ、国債の利回りは上昇。政権交代に市場は厳しい反応を示した。

 マドリード市場の株式指数(IBEX35)は21日昼までに2%あまり下がった。国債(10年)利回りも6・5%を超え、危険水域の7%に近い水準に迫った。新内閣発足は12月後半になるが、メディアは「閣僚人事を早く示せ」(同国紙ABC)と、新首相となるラホイ氏に一斉に迫った。

 注目の財務相人事は、大手銀行BBVAのフランシスコ・ゴンザレス会長、元スペイン中央銀行理事のホセ・ゴンザレスパラモ欧州中央銀行(ECB)専務理事らが候補にあがっている。

 ラホイ氏は20日の勝利演説で「私の敵は失業と財政赤字、過大債務、経済停滞」と、課題を要約したが、四つの問題は絡み合っており解決が困難だ。スペインが2012年に財政赤字国内総生産(GDP)の4・4%に抑える目標を達成するには、約300億ユーロ(約3兆1200億円)の緊縮策が必要とされる。だが歳出削減は景気を冷え込ませ、雇用状況を悪化させる。

 マドリード中心部では、失業者が営業停止したホテルを占拠。貧困層の約20人が住み込み、ホテルは経済悪化の象徴となっている。

 ホテルを占拠する一人で元清掃員のグローサ・マルティンさん(50)は「福祉や教育予算を減らされたら、娘や8人の孫を抱えてやっていけない」と訴えた。エスペランサ・エンカドさん(75)は「年収は約5000ユーロ(約52万円)の年金だけ。南米からの移民5人とアパートを共同で借りていたが、我慢できず逃げ出した」と嘆いた。歳出削減が貧困層を追いつめ、消費は冷え込み、失業が増える。