警察官のストで犯罪多発―ブラジルの観光都市が危機に

サンパウロ(ブラジル)】ブラジル・バイア州の海岸沿いにある観光都市サルバドルでは、同州の警察官がストライキを始めたことで殺人や略奪事件が多発しており、3000人近いブラジル国軍兵士が警備にあたっている。

 ルセフ大統領は5日、国軍に対し、サルバドルへの部隊展開を命令した。警察官のほぼいなくなったサルバドルで3日、30人以上の殺害事件が報告されたことを受けた措置だ。サルバドルでは先週にストが始まって以来、少なくとも55人が殺害されており、当局者によれば、これは昨年同時期の約2倍だという。

 ワグナー州知事をはじめとする州当局と多くの地元住民は、警察官のストを受けて犯罪が増加していると非難している。犯罪を犯しても罪に問われないという感覚がまん延しているという。先週末にはストを行っている警察官の団体が主要道路の往来を妨害した。中には銃を振りかざす警察官もいた。当局は破壊行為の疑いのある警察官に対し、多数の逮捕状を出した。

 サルバドルのショッピングモール3カ所でステーキチェーンを運営する経営者アンドレ・ケルズマンさんは「警察が犯罪の波を鼓舞している」と語った。犯罪の波が最高潮に達していた3日、ケルズマンさんのチェーン店のあるモール内で発砲事件が起こった。ケルズマンさんが電話で明らかにした。

 しかし、サルバドルは5日までに平静を取り戻し始めた。テレビのニュースはライフル銃を持った兵士が世界的な砂糖取引中心地だった旧市街の古い石畳の道路を歩く一方で、地元のビーチが日光浴する人であふれている様子を放映した。

 殺人事件の増加は、サルバドルの暴力的な暗黒面を想起させた。サルバドルでは、2週間もしないうちに年に1度のカーニバルが行われる。サルバドルのカーニバルは、ライバルのリオデジャネイロのものに次ぐ人気だ。一方でサルバドルは殺人率が米国の4倍以上に及ぶブラジルで最も危険な都市の1つだ。また、南国らしい気候と独特の料理と音楽で人気のサルバドルは、2014年のサッカーのワールドカップ(W杯)の開催都市の1つでもある。

 今回のバイア州の警察のストは、ブラジル北東部で起こったストの中では最新の動きだ。ここ数カ月の間に、近隣のセアラ、マラニョンの両州の警察もストを起こした。警察は地元政府に対し、警察官の給与を全国水準にまで引き上げる新法を施行するよう求めている。

 北部の州の一部の当局者は給与引き上げと法律の施行を行わない根拠として、同国で最も貧困な地域であるため、財政が破綻する恐れがあることを挙げている。